サービス・ドミナント・ロジック(Service Dominant Logic)では、
「価値は受益者を含む複数のアクターによって常に共創される」(公理2、基本的前提6)
「価値は受益者によって常に独自にかつ現象学的に判断される」(公理4、基本的前提10)
「価値共創はアクターが創造した制度と制度配列を通じて調整される」(公理5、基本的前提11)
としています。
(出典:「サービス・ドミナント・ロジックの発想と応用 - R.F.ラッシュ、S.L.バーゴ」)
「価値」というのは、どちらかが一方的に提供しているわけではなく、受益者(顧客)も自分の知識や経験や技術など(リソース)を活用して物を使ったり消費したり、サービスを受けたりします。したがって価値は共創される(Value is co-created)ことになります。これを「価値共創」と呼びます。
また、価値はその受益者(顧客)によって、さらにそのときどきの状況・環境等、つまり文脈によってそれぞれ違うものになります。このように共創される価値を「文脈価値(Value-in-context)」といいます。
とすれば、企業は顧客に価値を提供(Value delivery)することはできない、ということになります。価値は受益者(顧客)が独自に判断するわけですから、企業にできるのは価値の提案(Value Proposing)までなのです。
この価値提案に対して、顧客は自分のリソース(知識と技術)を使って、使用・消費・体験します。そして重要なのは、最終的に価値を決めるのは顧客(受益者)であるということです。
顧客の生の声を聞いて新しい製品やサービスを開発するという意味での価値共創、サービス提供時に顧客の状態に合わせたり、顧客の要望にきめ細かく答えたりという意味での価値共創はこれまでも行われてきました。
しかし、これらの共創活動とは「価値」の捉え方が全く異なっています。
「価値は受益者によって常に独自にかつ現象学的に判断される」
価値は関係者の数だけ存在します。そのエコシステムをどう創出していくかという、時間軸を含めた視点が「価値共創」型プロジェクト推進の肝になるのです。